計測モード
Cosmo-Zの波形記録モード
Cosmo-Zの波形記録モードには、ディジタイザモードと、イベントモードの2種類があります。
ディジタイザ(オシロ)モード
オシロスコープのように時系列にデータをキャプチャするモードです。
最大32chまで、指定したすべてのチャネルの同時計測が可能です。
メモリ(512MByte)の許す限りの長さの計測ができます。
- 1ch 125MHzで計測:最大2.0秒
- 8ch 100MHzで計測:最大0.16秒
- 32ch 10MHzで計測:最大0.8秒
計測したい周波数、チャネルは自由に選択可能です。
100MHzで、100Hzの正弦波を1000万ポイントの長さ計測
最大で100万ポイント程度の記録が可能ですが、データ量が大きくなる欠点があります。また、上記の「処理能力」で述べたようにデータ速度によってサンプリング速度やチャネル数が制限されます。
長時間の波形を保存することができるので、後からオフライン解析することもできます。
100MHz 2chで、矩形波などを200ポイントの長さ同時計測
イベントモード
前述のように、ADCから送られてくるすべての波形を記録すること、SDカードやネットワークのスループットが間に合わず、データ量も膨大になります。連続データのキャプチャであれば内蔵メモリは数十秒しか持ちません。
イベントモード(波形計測回路)とは、信号が発生した瞬間のみデータを記録する機能です。
イベントがごく短期間に発生し、さらに発生確率が低い場合は、すべての時間のデータを記録すると非常に多くの無駄が発生します。
放射線の計測への応用
宇宙線のように稀にしか発生しないイベントを長時間計測するにはイベントキャプチャ機能が有効です。
イベントキャプチャとは、イベントが発生した期間だけ波形を記録する機能です。具体的には、計測値があらかじめ設定した値を上回ったら(もしくは下回ったら)、トリガ前後の期間の計測を行うという動作モードで、イベント発生期間の前後しか記録されないのでデータ量を削減できます。
波形データとともに、イベントが発生した時のチャネル番号、時刻(10ns単位で48bit)、パルス高さ、パルス面積、ペデスタルレベル(ベースライン)、トリガレベル、キャプチャ時間等の情報を「ヘッダ」として出力します。
また、イベントが発生した時刻と発生期間の最大値(最小値)をだけを記録することで、さらにデータ量を削減することができます。
トリガに同期した繰り返し波形の記録
パルスレーザ(ポンプ光・プローブ光)を用いた測定や、電波の反射の解析では、外部トリガ入力に同期した計測が行われます。
このような用途にもイベントキャプチャが活用できます。
イベントモードはレーザによる測定だけではなく、レーダーの処理などにも有効です。
例えば、パルス状の電波を発生する装置があって、その反射波をFPGAで処理したい場合などにも使えます。FPGAにI/Q復調器を実装し、AD変換された生データからI、Qの波形を生成して記録するといったことが可能です。
イベントモードの特徴
- トリガが発生した波形のチャネルのみを記録
- 1つのイベントの長さは1024ワードまで(FPGAの改造で増加可能)
- イベントのない期間のデータを記録しないことで、データ量の削減が可能
- キャプチャされた波形の個々に、タイムスタンプとパルス高さなどのヘッダが付加されており、オフラインで現象を解析可能
イベントモードの仕様
- 記録長:標準構成では最大998ポイント(約12μ秒)、オプションで最大8010ポイント(約100μ秒)
- デッドタイム:一回の計測で100ns以下
- タイムスタンプの形式:システム起動時からのクロック数を10nsで記録
- 計測される値:パルスのピーク値、パルスの面積、トリガ時間、無信号時のレベル他
- 精度:ADCの制度による
- ヘッダ長:24バイト
- データ長:0~998または0~8010ワード(1ワード=2バイト)