TFA(Timing Filter Amplifier)
原理の説明
TFAは、減衰がゆっくりなパルスを短くすることと、入力パルスに含まれるノイズを除去してS/Nを向上させるために使われます。
TFAを通すことにより、信号の幅を短くすることができます。
(緑:入力信号 茶色:出力信号 微分時定数0.5us)
具体的には、CR微分回路とCR積分回路をセットにした下の図のような回路がFPGAの中でディジタルフィルタとして実装されています。このため温度や経年変化がなく、任意の時定数にセットすることができます。
設定方法
TFAの設定は下のパネルで行います。
- tau_dは入力の微分回路の時定数を示します。仮に階段状の波形が入力された場合にこの時間幅のパルスに変換されるという値で。1usで問題ありません。
- 減衰する波形を微分するとアンダーシュートが生じますが、tau_pzに入力波形の減衰時間と等しい時定数を設定すると、この歪を打ち消すことができます。NaIシンチレータでは0.25usにします。
- tai_iは積分回路の時定数です。微分回路だけだとノイズが増えてS/Nが悪化するため、積分回路で滑らかにします。時定数にはtau_dと等しい値を入れてください。
- GainはCR-RC回路の全体のゲインです。tau_d=tau_iのとき、Gainを2.818 (自然対数の底)にすると、
入力波形と同じパルスハイトになります。 - 入力波形の振幅が小さくMCAの分解能が落ちる場合にはGainを大きくしてください。最大で20まで設定可能です。
- TFAを使用する場合は「有効」チェックボックスをONにします。
デジタルフィルタであるため、これらの設定値は連続的に変化させることはできません。必ずしも狙った値に設定できるわけではありません。tau_iとGainは相互に依存しているので、どちらかを変更するともう片方も少しだけ変化します。100ns以下ではサンプリング周波数と近くなるため値が発散しやすくなります。
波形の例
TFAを使わない場合の波形の例を示します。ノイズでギザギザしているのが見えています。
図 TFAを使わない生の波形
次の図はTFAを有効にした場合の波形です。ノイズが消えて滑らかになっています。
図 TFAを使わない生の波形
次の図はtau_pzの値が正しくない場合で、大きなアンダーシュートが生じています。
図 TFAのτpzが大きすぎる場合
オシロモードの波形ビューを見ながら最適な形状になるようにτpzを調整してください。