放射線計測のやり方

このページではCosmo-Z/Cosmo-Z Miniを使った放射線計測のやり方を説明します。使用した機器と特定対象は下記のとおりです。

  • 計測器・・Cosmo-Z Mini
  • 検出器・・2インチNaI (FUI Japan製)
  • 対象・・バックグラウンド、塩化カリウム試薬、モナザイト

信号の確認

最初にNaIからの信号が来ているかどうかを確認します。

Cosmo-Z MiniのCH1にNaIからの信号ケーブルを接続します。

 

NaIの周りには安全な線源として塩化カリウムとモナザイトを置き、NaIの電源を入れます。

 

ブラウザでWeb波形モニタ(http://cszmini/monitor.html)を表示します。

この時点では波形が表示されていなくても構いません。バックグラウンド程度のカウントレートではイベントが発生するのはごく稀なので、波形を捉えないほうが多いためです。

 

CH1のトリガをFALL/8000に設定し、トリガをNORMALにします。ここでは8000としましたが、お使いの環境によって変えてください。

バックグラウンドが入射した場合のみトリガがかかって波形が表示されるようになります。

 

デフォルトでは縦軸はADCの値になっていますが、Y軸を電圧で表示をONにすることで電圧表示ができます。また、表示範囲を自動/フル/ユーザ指定で変更することで任意の分解能で表示することができます。

 

なお、トリガタイプがfallは閾値を超えて下回ったときにトリガが発生します。riseは閾値を超えて上回ったときにトリガが発生します。設定値は閾値のADCの値になります。

ADCは0Vが8192になる(14bit ADCの場合)ので、8000程度にすると何らかの負電圧の発生を検出できます。

 

トリガタイプをdiscriに設定すると、ペデスタルレベル(イベントが発生していないときの中央値)より〇〇だけ下回った場合にトリガが発生します。discriトリガの場合、設定値はペデスタルレベルとの差なので通常は100とか200程度になります。

 

 

一般的に、NaIのペデスタルレベル(ベースライン)は温度などで容易に変動するので、レートがそれほど高くなければDiscriを選択すると分解能の低下を防ぐことができます。

コマンドラインからの設定

コマンドラインからトリガを設定するには、 /cosmoz.elf trigコマンドを使用します。

/cosmoz.elf trig 1 fall 8000
/cosmoz.elf trig 2 rise 9100
/cosmoz.elf trig 3 discri 200

のように指定します。

 

イベント波形の保存

Webインタフェースからイベント波形を保存し、表示する方法を説明します。

ツールバーのSAVEボタンを押すと、波形キャプチャダイアログが開きます。

 

キャプチャ形式で「低レートパルス」を選択し、キャプチャ時間を設定します。ここで30と入力すると30秒間のイベントをキャプチャします。なお、ファイル名は現在時刻から自動的に設定されます。コメントというのはファイルに埋め込まれるコメントです。

 

キャプチャを開始すると、進行状況がダイアログ上で表示されます。

 

指定された時間キャプチャすると元の波形表示画面に戻ります。

 

記録するイベント波形の長さの指定

イベントモードではトリガが入った前後の期間の波形を記録しますが、この期間を設定するにはWebインタフェース上でトリガボタンを押します。

次のようなダイアログが開くので、トリガ前の計測ポイント数とトリガ後の計測ポイント数を指定します。

 

コマンドラインでの指定

キャプチャする波形の長さをコマンドラインで指定するには、/cosmoz pretrigコマンドを使用します。

/cosmoz.elf pretrig pre=〇〇〇

でトリガ前の長さを指定し、

/cosmoz.elf pretrig post=〇〇〇

でトリガ後の長さを指定します。

 

コマンドラインからのキャプチャ

コマンドラインからのキャプチャを利用すると、cronを使って毎日決まった時間に記録したり、他のプログラムやスクリプトからキャプチャを起動できるようになります。

コマンドラインでキャプチャを開始するには、SSHまたはUSB-UARTでログインして、/cosmoz.elf capture コマンドを使います。

書式は以下のとおりです。

/cosmoz.elf capture 長さ ch=チャネルマスク trig=トリガタイプ file=ファイル名

トリガタイプは、mesunitまたはeventを指定します。

  • mesunitが指定された場合、長さは秒数となります。
  • eventが指定された場合、長さはイベント数となります。

長さはtrig=の指定によりますが、秒数またはイベント数です。

チャネルマスクはCH1をbit0、CH32をbit31に見立ててビットフィールドを16進数で表現します。例えばCH1だけをキャプチャしたい場合はch=0x01とします。CH1からCH8をすべてキャプチャしたい場合はch=0xffとします。CH1とCH6だけ記録した場合はch=0x21を指定します。

file=ファイル名 はファイル名を指定します。データは/home/share/dataフォルダに保存されます。

次のコマンドの例では、CH1を1時間計測し、結果を1hourというファイルに記録します。

/cosmoz.elf capture 3600 ch=0x01 trig=mesunit file=1hour

イベントキャプチャ実行時はコンソール画面に現在の経過秒数と、カウント数、内蔵メモリの書き込み先頭ポインタが1秒ごとに表示されます。

 

イベント波形の表示

Webインタフェースのメインメニューでファイルを押すと、計測されたファイルの一覧が表示されます。この中で見たいファイルのファイル名をクリックします。

 

トリガポイントを基準に重ねて描いた波形が表示されます。

 

スペクトラムを選択すると、データファイルをオフライン解析したスペクトラムが表示されるので、左側のキレを見てトリガのレベルやディスクリの値を調整します。

 

カウントレートを1分おきに計算してグラフ化する機能があります。次の図はカウントレートの変化を示したものです。最初はバックグラウンドを測っていて、26分くらい経過後に塩化カリウムの試薬瓶を1個置き、55分ごろに塩化カリウムの試薬瓶を2個に増やしています。

 

Windowsアプリでの波形表示

無料の計測アプリケーションCosmo-Z Scopeを使うと、計測したデータファイルをWindows上で閲覧できます。

Cosmo-Z Scopeを起動したら、ファイル→インポート→Cosmo-Z データファイルを実行し、\cszmini\share\dataフォルダを開いてファイルを開きます。

 

ファイルがインポートされると、データが波形として表示されます。イベント波形は、イベントが発生した部分だけが記録されるため、大部分は黒くなっています。

拡大すると、個々のイベント波形が見えてきます。

 

また、波形表示で右クリックし、パルスハイトのヒストグラムを作成を選択すると、

 

スペクトラムで表示され、簡易的なMCAのように見ることができます。

 

波形データの解析方法

コマンドライン上での解析

Cosmo-Zのデータファイルは、/home/share/dataフォルダに格納されていて、計測したイベントの情報はすべてこのファイルに含まれているので、このファイルを解析することで実験に応じたデータを取り出すことができます。

 

データファイルの情報を表示するには、SSHまたはコンソールからログインして、

cosmoz.elf fileinfo データファイル名

とコマンドを入力します。

計測した時点の時刻やパラメータ、トリガの設定など、計測全体のパラメータが表示されます。

 

ファイルに含まれた個々のイベントデータを取り出すには、

/cosmoz.elf filewave データファイル名 > 出力ファイル名

と入力します。

>ファイル名を付けないと以下のようにテキストで延々と表示されます。

出力結果は非常に長いので、出力結果は画面に表示させるのではなく > 出力ファイル名でリダイレクトしてファイルに保存してください。

Windows PCへのダウンロード方法

Windows PCでデータファイルをダウンロードするには、Web管理画面のインタフェースかでファイル名の右にあるダウンロードボタンを押すか、

 

Windowsのエクスプローラで\cosmoz\share\dataフォルダ(Cosmo-Z Miniなら\cszmini\share\dataフォルダ)を開きます。

 

データファイルのフォーマット

データファイルのフォーマットはこちらのページに記載しています。

低レートイベント波形を解析するためのプログラムは下記のURLかダウンロードできます。